いたずらな花蜜 ~妖精がつなぐ未発達な恋心~ 《 第四章 10

「へえ……そうなんだ?」
 フィースは口もとに弧を描き、指で押し上げていた乳頭を弾いて、それから今度は上から下へと振りおろした。
「ゃっ、あっ、うう……っ!」
 薄桃色のトゲは彼の指で上下に執拗になぶられ、いっそう硬さを増す。アリシアの体が快感にもだえてわなないているのをフィースは見て取り、悦ぶ。
「――じゃあ、舐めとってあげる。今度こそ」
 妖精の湖でのことが脳裏をよぎる。あのときも、彼は――。
 フィースはちゅっと名残惜しそうに乳頭に口付けたあと、真っ白なフリルレースが何枚も重なったドレスの裾をたくし上げた。
「……っ!」
 太ももを這い上がってきた手がドロワーズを引きおろす。
「ッ、フィース? あの、その……」
 アリシアはしどろもどろしながら脚を固く閉じたままだった。
(舐めとる、っていうのは)
 下半身をあらわにされてしまったのだ。彼が目指しているのは脚の付け根なのだとわかってはいる。けれど、だからといってそこを開け広げにするほどの大胆さなど、とてもではないが持ち合わせていない。
 そこがふだんは秘められていて、ひとの目に触れる――さらけ出すのは、淫らなことだとさすがに認識している。すでに乳房はさらしてしまったから、いまさらという気もするが。
「脚を広げて。よく見せて……。見たいんだ、きみのすべてを」
 アリシアは口もとに当てていた手をピクッと動かした。哀願するような眼差しを向けられ、脚に込めていた力がゆるむ。
 それでも、緊張感はいっこうにぬぐえない。フィースの両手が太ももの内側に入り込んだ。ゆっくりと、秘芯をまみえさせる。
 彼の視線で、身が焼け焦げてしまいそうだった。
 フィースは翡翠色の目を凝らしてアリシアの秘部を見つめている。
「ああ、本当に……たくさんあふれてる」
「ふ……っ!」
 熱い息が吹きかかることで、ますます内側が潤む。花芽は震え、蜜はこぼれ落ち、ふだんは真面目な騎士をおおいに誘惑する。
「フィー……ス」
 あまりの羞恥で脚がガクガクと震え始めた。いつまでこうして間近で見つめられるのだろう。
「……恥ずかしい?」
 問われ、素直にコクコクと何度もうなずく。
 フィースは顔をほころばせる。
「かわいいよ、アリシア」
 熱っぽくささやき、無垢な蜜口に唇を寄せた。
「ひ、ぅっ……!!」
 蜜のあふれ口をちゅうっと吸われ、その妙な心地には戸惑いと恥ずかしさばかりが先に立つ。
 フィースはそこを吸うことが楽しいのだろうか。すべて見たいと言っていたけれど、なぜなのだろう。
 いまは妖精にいたずらをされてこうなっているわけではない。だからアリシアにはそういったことを考えるいとまがあった。
 しかしそうしてあれこれと考えているあいだもフィースは蜜をすすり、吸い尽くしていく。
「きゃ……っ!?」
 蜜の出所に舌を沈められた。肢体がビクンッと跳ねる。
  フィースは潤んだ狭道の浅いところを舌でえぐり、なかの蜜までも堪能した。
「はぁっ、ぁ、んっ……!」
 彼の舌は出たり入ったりを繰り返している。そのあたたくやわらかな、ねっとりとした感触がたまらなかった。明確な快楽が意識を支配し始める。
「やぅっ、ん、ん……ッ!!」
 アリシアが目を見ひらく。舌の出し入れはそのままで、膣口の上で震えていた花芽をフィースは人差し指でグリグリと押した。
(気持ち、いい……っ)
 一度それを認識してしまったら、もうそれ以外のことは考えられなくなった。舌で体内を蹂躙されるのも、指が小さな突起をつまんでこねくりまわすのも、とにかく気持ちがよい。
「あっ、ふぁっ、んぅッ」
 本能的に腰が揺れ、みずからも快感をいざなおうとする。アリシアのそんな淫らな反応にフィースは口角を上げ、そして指と舌を入れ替えた。
「っ……!? あっ、ァアッ……!!」
 舌の代わりに指が蜜道へ、より深くはまり込む。それまで指でもてあそばれていた淫核は舌先でベロベロと舐め転がされた。
「はぅっ、ん、んぁっ、あ……!」
 雄々しく細長い指が体の深いところへと突き進んでいくのには焦燥感を覚えた。快楽が強すぎて、恐ろしくなる。アリシアはベッドのシーツをぎゅうっと力いっぱいつまんだ。力がこもりすぎて、指先が白くなっている。
「楽にしていて、アリシア。……ぜんぶ、俺にあずけて」
「ふっ、ぅく……!」
 濡れた花芽の前でそうして話されるのですら刺激を感じてしまう。
「む、むり、だよ……! だ、だって……フィースの、指……。あ、ぁ! 動かしちゃ、や……っ!!」
 フィースは身を起こし、顔を寄せてきた。指はあいかわらずナカにうずめられている。
「怖くないから……ね? アリシア」
 彼のあいているほうの手が頭を撫で、首すじをたどった。
 幼いころ、ともにベッドで眠ったときのことを思い出した。悪い夢を見て寝付けずにいると、こうしてゆっくりと肌を撫でられた。優しい声音と仕草は、あのころとなにも変わっていない。子どもの時分と違うのは――。
「ぁっ……!」
 乳房をつかまれ、ふにゃふにゃと揉みしだかれる。同時に、下半身に沈んでいた指もゆるやかに抽送を始めた。
「ナカ……よく濡れてる」
 告げられ、なにを答えればよいのか、どう反応すべきなのかわからなかった。ただひたすら羞恥心と快感をあおられ、喘ぎ声ばかり発してしまう。
「ぁうっ、ん、んくっ……!」
 フィースはアリシアの尖りきった乳頭を指で押し込め、もう片方は口に含み、蜜壷に挿し入れた中指を激しく前後させ、親指で肉粒を押しつぶした。
「はぅっ、ぁ、ああっ……!!」
 乙女の隘路はビクビクと収縮して指を締め付ける。
 アリシアの唇は淫らに半分ほどひらき、たわわな乳房は忙しなく上下していた。呼吸は荒く、碧い瞳はうっすらと涙に濡れ、額には汗がにじんでいる。乱れたまま腰のあたりでもたついている少女趣味のドレスがいまは似つかわしくない。むしろ卑猥さを際立たせている。
 そんな彼女の姿は騎士の最後の自制心をたやすく崩壊させた。彼の下半身が猛りを増す。
「……――ッ、アリシア」
 絶頂したばかりのアリシアは惚けていた。
(フィース……? どうしてこんなに辛そうな顔をしてるんだろう)
 頭のなかでぼんやりとそう思うものの、それを彼に尋ねるまでには至らない。カチャカチャという金属音がいったいなんなのかも、このときはわからずにいた。
「……――っ!?」
 突然、脚を大きくひらかされた。いつになく荒っぽい仕草だった。
 彼の重みでギシッとベッドがきしむ。フィースはあいかわらず眉根を寄せていて、苦しそうだった。ただならぬそのようすを目の当たりにして、しだいに頭のなかがハッキリとしてきたアリシアは彼に問いかけようとする。いったいどうしたの、と。
「―――!!」
 しかし尋ねられなかった。
 下半身にほとばしったのは、いままでに経験したことのない強烈な痛み。
「ぅ、く……っ!!」
 なにが起こっているのかまったくわからなくて、とにかく痛くて、涙がぼろぼろと頬を伝い落ちていく。
「ごめ、ん……。ごめん、アリシア……ッ」
 碧い瞳からこぼれた涙を両手ですくいとり、フィースは何度も謝罪した。
 ドクン、ドクンと秘めたところが脈打っている。それは自分自身の脈動ではなかった。
 下を見やる。ドレスが邪魔でよくわからないけれど――彼のそれが、体内に埋まっている。つながっている。
 痛みがしだいに和らいでいく。だがフィースはいまだに険しい表情のままだった。
「フィース……? 苦しい、の?」
「……っ! ちが、う。俺は――」
「じゃあ、どうして……。そんなに辛そうなの?」
 尋ねると、フィースはゴクリとのどを鳴らした。
「きみのこと、大切にしたいのに――できない、から」
 ガクンッ、と体が大きく揺れ、それから下半身の異物感が顕著になった。そこが彼とつながっていると認識したからなのか、あるいはほかの理由なのかさだかではない。
「んぁっ! あ、ぁふっ……ッ!!」
 体を激しく揺さぶられることでベッドが弾み、目に映る幼なじみの騎士もガクガクと揺れてさだまらない。
 初めはチリチリとした痛みにさいなまれたが、体内を往復されるたびにそれは薄れていった。
 フィースはアリシアのなかに沈めた楔を激しく前後させた。ジャケットの肩についているフリンジの揺れ幅はとてつもなく、律動の激しさをよく表している。
「ふぁっ、ぁ、う……! んはっ、あぁ……!」
 痛みのあとにやってきたのは快楽だった。ぐちゅぐちゅと響く水音が自分自身から発せられているのが不思議でならないものの、彼のそれが体の奥深くを突くと、絶叫してしまいたくなるほど気持ちがよかった。
 ――頭のなかが白く霞んでいく。意識が薄れていく。
「……アリシア」
 自分の名を呼ぶ声は弱々しく、そのあとに触れてきた唇はひどく熱を帯びていた。

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