いたずらな花蜜 ~妖精がつなぐ未発達な恋心~ 《 第六章 09

「でも、これじゃあ全然――んっ、ぅ!」
 双乳のいただきをキュッ、キュッと引っ張り上げられた。
「やだっ、フィース……! ん、はぅ……っ」
 フィースは親指と中指で乳首の根もとをつまんでクニクニと薄桃色を揺らし、その先端を人差し指でツン、ツンッとリズミカルに押している。
「きみのここはどうしてこんなにさわり心地がいいんだろうね。本当に……いつまででもいじっていられる」
 惚け気味にそう言って、フィースはアリシアの乳首をつまんだまま彼女の体をベッドに押し倒す。
「ぁ……っ!? ゃ、んっ……!!」
 肌ざわりのよい銀髪が胸に当たる。ふくらみの先端を舌先でチロチロとくすぐられ、甘ったるい声を漏らさずにはいられない。
 フィースはというと、アリシアの乳首を舐めまわしながら首のタイをほどいて床へ放り投げているところだった。
 先ほどは「脱がせて」と言ってきたくせに、結局は自分でさっさと服を脱いでしまった。そのことがやや不満ではあるが、いまは互いに裸の状態なのでよしとする。
(私ばっかり見られていたんじゃ、不公平だもの)
 大きな声では決して言えないけれど、彼の裸を見るのが好きだった。鍛え上げられた体は非常に男性的で、当たり前だが自分とはまったく異なる。
 ふとフィースが顔を上げた。アリシアの視線に気がついたのだろう。
「……なに?」
「へっ!? い、いえ……なんでもない」
 肩と腕のたくましい筋肉に見とれていたのだとは到底言えない。
「アリシア。思っていることは素直になんでも言って。隠し事はよくない」
「隠し事、なんて……。あ、んぅっ」
 すっかり硬くなっていた上半身のつぼみを指で素早くあらゆる方向になぶられている。下半身の花芽にはあふれすぎた蜜を塗り込められ、こうなってくると隠し事はまったくできない。素直に告白するまでとことんいじられるに決まっているので、早々に白状する。
「見とれて、たの……。あなたに……あなたの、体に」
 アリシアの瞳は潤んでいた。扇情的な眼差しは彼女のその言葉とあいまってフィースの肉欲をいっそう奮い立たせる。
「は、ぁ……っ」
 彼の指が蜜壷に沈んでいく。
「ねえ……アリシア。きみのここは指だけじゃ足りないみたいだ。もっと太いものを欲しがってるように思える」
「ふぅっ、う……!」
 のんびりノロノロと指を抜き差しされ、ぐちっ、ぬちゅっという水音が緩慢に奏でられる。
 アリシアは小さくコクコクとうなずいた。
「ん? どっち。俺のを挿れてもいい? それとも、こするだけのほうがいいかな」
「な、なかに……欲しい。早く、フィース……!」
 嬉しそうに彼が笑った。しかしどこか恍惚とした笑みだった。
「ごめん、つい意地悪をしたくなる。きみがあまりにもかわいらしいから」
「っ、ふ……」
 両脚を大きくひらいて秘部を晒すこの体勢は恥ずかしい。けれど彼のそれでなければ身の内の空虚は埋まらない。
「ぁ、んんっ……!!」
 隘路に打ち込まれた楔の存在感はすさまじく、指の比ではない。肉襞を押し広げながら彼の一物は最奥まで届く。
「アリシア……。愛しい――俺だけの姫」
 悩ましげにフィースが言った。
「ひ、ぁぅ……ッ、ん、く……!」
 喘ぎ声ではなくて、なにかべつの言葉を返したいと思うのにそれがかなわない。抽送がしだいに大胆になっていく。
 体を突き抜け、貫かんばかりの激しい律動に見舞われる。
 フィースはアリシアの乳房を揉みしだくのをやめて彼女の両手をとった。すべての指をしっかりと絡めている。
「……ちゃんと、声を聞かせて。きみが達するときの声を」
 切羽詰まっているような言い方だった。余裕がまったく感じられない。
 口を押さえるものがないので絶叫するしかない。
 高い声を出して果てを迎える。身の内に満ちて肉襞を侵していくのは、有形自在な究極の愛。ドクドクと暴れまわるそれはまどろみに似た心地よいリズムを心と体にもたらす。
 彼が重くのしかかってきた。互いに肩で息をしている。
 幼いころはそばにいることが当たり前だった。いまは――そばにいて、こうして素肌で温もりを感じ合っていなければ物足りない。
「フィース……」
 アリシアは彼にその気持ちを伝え、フィースの体をぎゅうっとさらにきつく抱きしめた。
 ――その後、幾度となく彼に求められたのは、言うまでもない。

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