たなぼた王子の恋わずらい 《 10

 自然と息が弾んでくる。揉みまわすばかりでなく乳房のいただきに触れて欲しいと思ってしまう。

「ふっ……」

 喘ぎを含んだカトリオーナの息がアーウェルの首すじにかかると、彼の手指はようやくふくらみの尖った部分へと向かった。
 そこに触れて欲しいと思っていたのに、いざそうされると戸惑いがでてくる。アーウェルはシュミーズごしにカリカリと乳頭を引っかいている。

「ん……んっ。……ふ、ぁっ!」

 押しなぶる動きも加わって、この行為が快感を得るものなのだと身も心も認識する。テラスの夜風で少なからず冷えていた体が急激にほてり始めた。心地よい焦燥感が全身を駆け巡る。
 シュミーズの生地と乳頭がこすれる感触を気持ちがいいと思ったことはいままでになかった。それだけでも、とてつもなくよかったはずなのに――。

(アーウェルさまの、指……)

 こういうことを貪欲というのだろう。彼の指先がじかに触れるのを待ち望んでしまっている。

「ンンッ……!」

 カトリオーナが大きく身じろぎをする。その反応を合図と捉えたアーウェルは彼女のシュミーズを両手でいっきに肩からずり落とした。そのままドロワーズも一緒くたに引き下げてしまう。

「あ……」

 一糸まとわぬ生まれたままの姿になる。

(じかに触れて欲しいだなんて)

 大それたことを考えていたことに気がつく。アーウェルの視線が体の隅々にまで走るのを感じて羞恥の熱が込み上げてきた。その熱はいったいどこからやってきてどこへ向かうのか、あてどなく際限なくふくらんでいく。
 カトリオーナは両腕で自身を覆い隠していた。無意識のことだ。

「俺はきみのことを知りたいと言ったはずだよ」

 耳のすぐそばで聞こえたのは極めて低い声だった。カトリオーナの体がピクッと打ち震える。

「――だから隠さないで。教えて」

 穏やかな声音とは裏腹に胸もとをこじ開けようとするアーウェルの両手は強引だ。
 彼に自分のことを知ってもらいたいのには違いないのだが、こういう形で知られるのは恥ずかしくてたまらない。それを素直に伝えるべきかと悩んでいるあいだに胸をあらわにされてしまった。
 さいわい先ほどのように体を凝視されてはいない。ただ、首すじに這う生温かい舌をくすぐったく感じた。

「ぁ……っ、んぁっ!」

 アーウェルはカトリオーナの肩口に顔をうずめたまま執拗に彼女の乳嘴を指で弾く。左右どちらのいただきも平等にそうされている。彼の指先は熱い。触れられるたびにそれを感じる。

「ひゃっ!? ぁ、あ」

 なぶるだけでなく押し込めたり引っ張ったりとせわしなく指が薄桃色の突起をいたぶりだす。下半身の疼きがいっそう顕著になってきた。これはいったい何なのだろう。初めてのことばかりで頭がうまく働かない。

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