たなぼた王子の恋わずらい 《 12

 いっぽうアーウェルは粛々と衣服を脱いでいく。

「……きみのせいでココの形が変わってしまった」

 カトリオーナと同様に裸になったアーウェルが自身の下肢に手を添えて言った。責めるような口調ではなかったが言葉の意味としては間違いなく責められている。

「わ、私のせいで……? ごめんなさい」
「真に受けないで。冗談だよ、半分は。きみを責めてるわけじゃない」

 アーウェルが哀しげに笑う。

「カトリオーナ、きみのすべてを手に入れたい」

 両脚をつかまれて左右に割られている理由がわからない。これから何が起こるのだろう。

「――俺と契って欲しい」

 室内は薄暗いというのに、赤い髪と碧い瞳のコントラストがいっそう際立って見えた。
 いまになって両親の言葉が思い出される。

『なにをされても拒んではいけない』
『いやなら拒んでいい』

 カトリオーナはゴクリと喉を鳴らした。

(いやじゃ、ない――)

 だから受け入れる。この選択は両親の言いつけをやぶることにならない。
 もっと彼を知りたいと思った。求めてやまないのだ。彼と触れ合っている部分が熱く焦がれて、アーウェルを欲している。何が起こるのか、何をされるのか具体的なことはわからない。怖い気持ちがないと言ったら嘘になるけれど、それ以上にもっと先へ進みたいと思った。
 カトリオーナはコクンとうなずいた。本当は言葉できちんと返事をしたかったのだが、発することができなかった。ひどく緊張しているせいだ。

「んっ……」

 脚のあいだに何かをあてがわれた。ピリリとした痛みに見舞われる。

「……すまない、カトリオーナ。ナカをほぐしてからのほうがいいに決まってるけど」

 短く息を吸う。痛みはどんどん大きくなっていく。到底おさまりきらないものを無理にねじ込まれているような、そんな感覚だった。

「……っ、待てない」

 その言葉と同時に壮絶な痛みが全身を突き抜けた。あまりのことに言葉が出ない。その代わりに涙があふれ出る。

「……っ、ふ。うぅっ」

 嗚咽が出るのをこらえる。しかし痛いものは痛い。涙が止まらない。
 ぼやけた視界に映り込んでいるのは眉根を寄せた赤い髪の王子様。彼も痛いのだろうか。尋ねたいけれどそんな余裕はない。
 アーウェルはしばらく微動だにしなかった。初めに体のナカを引き裂かれるような感覚がして、そのあとも痛みはジンジンと尾を引いていた。ただ、アーウェルが髪の毛や頬を撫でてくれたので幾分か気がまぎれた。
 どれだけの時間が経ったのかわからない。髪を撫でていたアーウェルの手がふくらみの先端をめがけて伸びてきた。こちらの反応をうかがっているような、慎重な手つきだった。

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