たなぼた王子の恋わずらい 《 13

 双乳のいただきをふたつとも指でつまみ上げられる。

「んっ」

 こすり合せるような指遣いは官能的で、下半身の痛みを和らげてくれる。

「……もっと奥まで進むよ」
「は……、んっ! ぃ……っ」

 返事をしたつもりだがおそらく伝わっていない。カトリオーナはコクコクと小さくうなずく。
 また痛むのだろうかと身構えた。しかし思っていたほどの痛みはなかった。

「ぁ、あ」

 鈍痛とともに体内の異物感が増していく。体の中に埋め込まれているこれは、何なのだろう。寝所での作法に関する知識は皆無だ。何もかもが初めてで、右も左もわからない。しかしきっとアーウェルが導いてくれるのだろう。

「カトリオーナ、俺の名前を呼んで」

 先ほども似たようなことをリクエストされたような気がするが、素直に従う。

「ァ、アーウェルさま」

 すると彼は険しい表情になった。何がお気に召さなかったのだろう。

「こんなに深くつながっているのにまだ『さま』なんてつけるんだね。いけないな」
「で、でも……っぁ、あぁっ!」

 カトリオーナのナカに埋め込んだ楔をアーウェルは奥深くで小刻みに律動させる。

「呼び捨ててくれるまで何度でも奥を穿つよ」
「ゃっ、あ……!」

 アーウェルは額にわずかばかり汗をにじませてカトリオーナの体を肉杭で突いて揺さぶる。

(私、どうしちゃったの)

 体の揺れが激しくなるにつれて、つままれたままの乳頭にも力を込められている。ついさっきまで痛みにむせび泣いていたはずなのに、いまはべつの感覚に泣かされている。気持ちがよくて、涙が出る。
 痛みは完全に消え失せたわけではない。しかし快感のほうが圧倒的にまさっているのだ。
 アーウェルの顔はグラグラと不安定に揺れている。そんなふうに見える。自分も彼も激しく動いているからだ。
 ポタリと何かが落ちてきた。アーウェルの汗だ。それから自身も汗だくだということに気がついた。とにかく暑い。彼とつながっているところに至っては灼熱だ。火がついてしまうのではないかと思ってしまう。

「カトリオーナ……ッ」

 いままでこれほどまで情熱的に名前を呼ばれたことがあっただろうか。

「ぁ、う……っ、んんっ!!」

 呼び返したいとは思えどやはり言葉が出てこない。それどころが意識が朦朧としてきた。
 ――カトリオーナはその後も長らくアーウェルに翻弄され続けた。

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