どこかあどけなさを感じさせる表情で眠る初見を千夏は唖然として見おろしていた。
(寝てる……!? こんな状況で、信じられない)
ともあれ彼が寝てしまったのは好都合だ。ベッドから抜け出そうと四肢を動かす。
「ん……」
すると、千夏の身体を自身に密着させるように背中にまわっていた彼の片手が更にきつくなった。
(うそ……腕、はずれない……っ)
思い切り動けばはずれるかもしれない。けれどそれでは彼が起きてしまい、帰れなくなるかもしれない。だからといってこのままでも、結局は身動きが取れない。
穏やかに寝息を立てる初見の顔を見ていたら、あれこれと考えるのが急に馬鹿らしくなった。千夏は脱力し、両手をベッドに投げ出した。
(でも、こんな格好じゃ眠れない……)
あごに当たる初見の髪は艶やかで柔らかく、時おり彼がわずかに頭を動かすから、そのたびに髪の毛が触れてくすぐったかった。
今夜は一睡もできないかもしれない。そう思っていたのに、身体はひどく疲れていたようで、それから小一時間も経たず千夏も深い眠りに入った。
千夏は寒さを感じ、肩にかかっていた布団をさらにうえへと引き上げた。
(もう、朝かな……だるい。起きたくない)
もう少し布団のなかでまどろんでいたかったのに、
「な……っにを、して……っん!」
上半身の敏感な赤い棘をちゅうっと吸い立てられて、一気に眠りから覚めた。
モゾモゾとうごめいている頭を布団ごとつかんで離そうとすると、よけいに乳首を強く吸われて腕に力が入らなくなった。
千夏は寒さをこらえてしかたなく布団をまくり、乳頭を食む彼をにらみつけた。しかし当の初見はそんな千夏をまったく気にしていないようすで、舌を動かし続けている。
「初見さんっ、いい加減に……っぁ、ふ」
「もう起きたのか、まだ夜明け前だぞ」
たしかにまだ陽は昇っていないようだったけれど、カーテンが開いたままの窓の外はにわかに明るかった。
「こんな……寝ていられるわけ……っく、ふぁっ!」
「いい声を出すようになってきたな」
唾液で濡れて屹立したつぼみを指のあいだではさまれ乳房と一緒くたに転がされると、出したくはないが嬌声を発してしまう。
「ん、ん……っは、ふ……んぅ」
あまりに激しく乳頭を貪られるから、勢いに負けて身体は仰向けになる。
ますます執拗に双乳を両手で揉みしだきながら左右交互に尖ったいただきを舐めまわされ、流されているのか心地よいと感じるようになっていた。
「……まんざらでもなさそうな顔だ」
言われて、千夏はいっきに頬を上気させた。彼にはわかるのだ、千夏が快楽に酔い始めていることが。
試すようにスルスルと腹部を這って下がっていった初見の片手は大きく円を描くように内ももを撫でた。流されているという自覚があった千夏は経験不足ゆえに途端に恐ろしくなった。
「やめ、て……もう、会社に、行かなくちゃ……っ」
したたる蜜の存在をどうしても知られたくなくて、強い抵抗の意思を示して彼の手首を力いっぱいつかむ。
しばらくじいっと見つめられていた。じっくりとはかって見極めるような視線。
「……家まで送って行こう」
どこか獰猛さを感じさせる視線を部屋の隅に投げて、初見は千夏を放してベッドを出た。
初見のマンションから自宅へ戻った千夏は素早く身支度をして会社へ向かった。そしてスケジュールを確認するなり落胆した。朝いちばんに初見酒造との打ち合わせが入っている。
(さっき別れたばかりなのに、もう顔を突き合わせなきゃいけないなんて)
重い足取りで初見酒造に到着した千夏は顔なじみである受付の女性に社長を呼んでもらうべく話しかけた。
「おはようございます、土倉さん! このたびはおめでとうございますっ」
何のことを言われているのかわからず目を白黒させていると、千夏よりも年下の受付嬢が嬉々とした表情で話し始める。
「朝礼で、土倉さんと社長がご婚約なさったと聞きました。どうぞこれからもよろしくお願いしますね」
開いた口が塞がらない、もしくは寝耳に水か。
千夏はあんぐりと口を開けたまま、否定する気にもなれずあいまいにほほえんだ。
(寝てる……!? こんな状況で、信じられない)
ともあれ彼が寝てしまったのは好都合だ。ベッドから抜け出そうと四肢を動かす。
「ん……」
すると、千夏の身体を自身に密着させるように背中にまわっていた彼の片手が更にきつくなった。
(うそ……腕、はずれない……っ)
思い切り動けばはずれるかもしれない。けれどそれでは彼が起きてしまい、帰れなくなるかもしれない。だからといってこのままでも、結局は身動きが取れない。
穏やかに寝息を立てる初見の顔を見ていたら、あれこれと考えるのが急に馬鹿らしくなった。千夏は脱力し、両手をベッドに投げ出した。
(でも、こんな格好じゃ眠れない……)
あごに当たる初見の髪は艶やかで柔らかく、時おり彼がわずかに頭を動かすから、そのたびに髪の毛が触れてくすぐったかった。
今夜は一睡もできないかもしれない。そう思っていたのに、身体はひどく疲れていたようで、それから小一時間も経たず千夏も深い眠りに入った。
千夏は寒さを感じ、肩にかかっていた布団をさらにうえへと引き上げた。
(もう、朝かな……だるい。起きたくない)
もう少し布団のなかでまどろんでいたかったのに、
「な……っにを、して……っん!」
上半身の敏感な赤い棘をちゅうっと吸い立てられて、一気に眠りから覚めた。
モゾモゾとうごめいている頭を布団ごとつかんで離そうとすると、よけいに乳首を強く吸われて腕に力が入らなくなった。
千夏は寒さをこらえてしかたなく布団をまくり、乳頭を食む彼をにらみつけた。しかし当の初見はそんな千夏をまったく気にしていないようすで、舌を動かし続けている。
「初見さんっ、いい加減に……っぁ、ふ」
「もう起きたのか、まだ夜明け前だぞ」
たしかにまだ陽は昇っていないようだったけれど、カーテンが開いたままの窓の外はにわかに明るかった。
「こんな……寝ていられるわけ……っく、ふぁっ!」
「いい声を出すようになってきたな」
唾液で濡れて屹立したつぼみを指のあいだではさまれ乳房と一緒くたに転がされると、出したくはないが嬌声を発してしまう。
「ん、ん……っは、ふ……んぅ」
あまりに激しく乳頭を貪られるから、勢いに負けて身体は仰向けになる。
ますます執拗に双乳を両手で揉みしだきながら左右交互に尖ったいただきを舐めまわされ、流されているのか心地よいと感じるようになっていた。
「……まんざらでもなさそうな顔だ」
言われて、千夏はいっきに頬を上気させた。彼にはわかるのだ、千夏が快楽に酔い始めていることが。
試すようにスルスルと腹部を這って下がっていった初見の片手は大きく円を描くように内ももを撫でた。流されているという自覚があった千夏は経験不足ゆえに途端に恐ろしくなった。
「やめ、て……もう、会社に、行かなくちゃ……っ」
したたる蜜の存在をどうしても知られたくなくて、強い抵抗の意思を示して彼の手首を力いっぱいつかむ。
しばらくじいっと見つめられていた。じっくりとはかって見極めるような視線。
「……家まで送って行こう」
どこか獰猛さを感じさせる視線を部屋の隅に投げて、初見は千夏を放してベッドを出た。
初見のマンションから自宅へ戻った千夏は素早く身支度をして会社へ向かった。そしてスケジュールを確認するなり落胆した。朝いちばんに初見酒造との打ち合わせが入っている。
(さっき別れたばかりなのに、もう顔を突き合わせなきゃいけないなんて)
重い足取りで初見酒造に到着した千夏は顔なじみである受付の女性に社長を呼んでもらうべく話しかけた。
「おはようございます、土倉さん! このたびはおめでとうございますっ」
何のことを言われているのかわからず目を白黒させていると、千夏よりも年下の受付嬢が嬉々とした表情で話し始める。
「朝礼で、土倉さんと社長がご婚約なさったと聞きました。どうぞこれからもよろしくお願いしますね」
開いた口が塞がらない、もしくは寝耳に水か。
千夏はあんぐりと口を開けたまま、否定する気にもなれずあいまいにほほえんだ。