ロストヴァージンまでの十日間 《 第十七話 熱い湯船(1)

湯気が立ちのぼる浴槽に肩までつかり、頭を浴槽の端にあずけて千夏は天井を仰ぎ見ていた。
瞳を閉じると、彼の声が頭のなかにこだまする。名前を呼ばれるようになってから、どうも調子が悪い。もっと一緒にいたいと思うし、さらには触れたいとまで考えてしまう。

(好き……なのかな、初見さんのこと。いやいや、私を崖から突き落とそうとした男なのに)

頭をブンブンと横に振っていると、ガチャ、とドアノブがまわる音がした。そしてすぐに初見の声がして、

「おい、また倒れてないだろうな」

「だっ、大丈夫です! ……入ってこないでくださいね」

返事はない。けれど出て行ったようすもない。脱衣所をうかがおうと浴槽から身を乗り出すのと同時に扉がひらいて、千夏はバシャンと水音を立てながらふたたびお湯のなかに身体を沈めた。

「なにしてるんですか……っ、入ってこないでって、いま」

「心配だから一緒に入ってやる」

目のやり場に困ってうつむいていると、初見は千夏の視線などまったく気にならないようで勝手に身体を洗い始めてしまった。

「私……っ、もう、上がりますから」

裸は見られてしまうけれど、それよりも湯船に入ってくる初見のほうが問題だ。
彼に背を向けて浴槽を出ようとしていると、案の定と言うべきかうしろから伸びてきた手にはばまれて、千夏はふたたび大きな水音を立てて湯につかった。

「は、放し……って……、ぁ……っ!」

素肌が密着する。背中に感じる彼の胸板はたくましく、猛々しい肉塊がお尻に当たっている。太ももから腹部にかけてゆっくりとお湯をかきわけるように撫でられて、千夏は小さな喘ぎ声を口にした。

「ん、ぅ……っ」

ずいぶんと長いことそうして身体を撫でまわされていた。けれど敏感な部分には一瞬でも触れてくれない。もどかしかは募るばかりで、千夏は目を伏せて身をよじった。

「初見さん、どう……して」

触ってくれないの?と言いかけて、口をつぐむ。この歳になるとなかなか素直になれないものだ。

「触ってもらいたいところでもあるのか? 言ってみろよ、千夏」

「……っく、ぅ」

彼の両手はようやく乳房をとらえる。乳輪の外周をゆるゆるとめぐる指が焦れったくて、気がへんになりそうだった。いや、もうおかしくなっている。

「あ……っ、さわ、って」

「どこを?」

「……っ、ちくび……」

「聞こえないな、もっと大きな声で言え」

「ち、くび……乳首、触って……っ!」

ぎゅっと押し潰されたピンク色のふたつのいただきは快感をいっきに高め、千夏に大きな嬌声を出させた。はしたなく喘ぎながら腰をくねらせ、下半身にも触れて欲しくて初見の顔を振り返った。

目が合うとすぐに唇が重なって、息つぎもできないくらいのキスに見舞われる。そうしているあいだに彼の片手が下肢に伸びていって、千夏は無意識に脚をひらいた。

「触ってと言わんばかりだな」

「だって……っん、くふ……っあ……はや、く……初見、さん……っ!」

外陰部を楕円にたどる指が焦れったい。この期に及んでまだ焦らそうというのか。千夏はわれを忘れて喘ぎ、ねだるように身体を初見のそれにこすり付けた。

「あまり誘うな。挿れたくなる」

「……っぅ、ぁ……あんっ!」

このまま、彼のものを受け入れてもいいかもしれない。花芯を指でリズミカルに押し潰されると、そんな考えが浮かんでしまうほどだった。

「ん……っ!?」

突如、両脚をつかまれて身体が湯のなかで浮く。まさか彼は本当に千夏の身体を貫こうと思っているのだろうか。受け入れてもいいかも、なんて考えはいっきに吹き飛んで、破瓜の痛みに対する恐怖で全身がおののく。

「怯えるな、なかには挿れない。脚を思い切り閉じろ。俺のをはさみ込むんだ」

彼のひざうえに乗る格好になった千夏は言われるままに太ももを交差させて固く脚を閉じた。あいだにはさまっている彼の怒張が花びらに触れて、密接する性器の存在をありありと感じさせた。

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