伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 《 第四章 03

 淡いオレンジ色のランプの光が彼の顔を半分だけ照らす。ジェラルドの顔は目に見えて怒気にあふれている。ランプの光は温かみのあるオレンジ色だというのに、彼の顔を冷たく照らし出す。光くらいではどうにもならないほど眉間にはシワが寄り、口は固く引き結ばれていた。

(何でこんなに怒ってるの?)

 不機嫌なのかとも思ったがそれとは明らかに違う。八つ当たりではなく、何らかの怒りが自分に向けられているのがひしひしと伝わってくる。
 エリスは気圧されてベッド端に座り込んだ。ジェラルドは彼女を冷ややかに見下ろす。

「庭で一緒にいた男は誰だ?」

 恐ろしい形相のジェラルドを見上げ、エリスは唇をぴくりと震わせる。
 庭は部外者の立ち入りが禁止されているわけではない。彼が何に目くじらを立てているのか、考えられる答えは一つしかない。いや、それはきっと思い上がりだ。彼は嫉妬しているのではなく、体良くコキ使える駒を失うのが嫌なだけだろう。

(私が結婚して職を辞したら、先生はまた一から別の人に指導しなくちゃいけなくなるし)

 彼の立場で考えればそれは確かに面倒だ。普段から多忙を極めているので尚のことそうだと思う。
 エリスがなかなか答えを言わないからか、ジェラルドは業を煮やしたように言葉を継ぐ。

「やけに仲がよさそうだったが――」
「幼なじみです」

 彼の言葉を遮るようにエリスは言った。ジェラルドの翡翠色の瞳が一瞬ぎらりと光ったような気がした。さながら夜道にたたずむ野生動物のように。

「その幼なじみとやらは何の用でわざわざここに来た」
「……求婚されました」

 一呼吸置いてそう答えると、ジェラルドは眉間のシワをいっそう深めた。

「でも――」

 求婚は丁重にお断り致しましたので今までどおり業務に励みます、と伝えるつもりだった。なにも心配することはないし、腹を立てるようなこともありはしないのだと。
 しかしその意思は言葉になる前に押し流されてしまった。

「む、っ」

 ジェラルドはエリスに口づけながら彼女の体をベッドへ押さえ込み、馬乗りになって性急に寝間着を剥き始める。

「ンンッ、ぅっ」

 人の話は最後まで聞け! と声を大にして言いたいのに、ジェラルドは口づけをやめない。どれだけ顔を背けても執拗に唇を追いまわされる。舌まで挿し込まれては、それが楔の役割を果たしてしまってよけいに口づけは止まず言葉を発せない。

(ああ、本当にイヤ……)

 舌戯だけで下肢が濡れそぼってしまうこの体が憎い。意地を張っても結局は表面上のことで、体の中まではその意地を貫き通すことができないのだ。
 ジェラルドはエリスに有無を言わせたくないのか、愛撫もそこそこに女淫を暴いて雄根を突きつける。

「――っ!!?」

 まさか中に挿れられるとは思っていなかった。彼だってエリスの生理周期を把握している。いまはまだ雄を受け入れるのには危うい時期だ。

「ん、ぁ、ああっ」

 痛みもなく肉竿は奥処へとたどりついて躍動する。獰猛に生き踊っている。

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