言葉もなくいっそうぼろぼろと涙をこぼすエリスにジェラルドはぎょっとして戸惑った。
「っ、なぜよけいに泣くんだ。泣き止ませたくて告白したというのに」
いたわるように目尻に指を添えられ、そんな優しい仕草にも歓びが込み上げて感極まってしまう。
「ぅ、くっ……。だって……先生がいきなり素直になるから……! ……嬉しくて」
すう、はあっと短く呼吸しながらエリスは続ける。
「私……もっと早く、素直になればよかった」
ジェラルドの瞳をのぞき込む。翡翠色の瞳はいつも優しさをたたえていた。よけいな一言にごまかされてそれが見えなくなっていただけだ。
本当は知っている。わかっていたけれど、知らないふりをしていたのだと思う。
郷里に帰ったときはわざわざ迎えに来てくれた。
病院勤務で寂しいときは会いに来てくれた。
――いつも全力で、たとえこちらがヘトヘトになっても、体を通して愛を伝えてくる。
涙を浮かべたままエリスはほほえむ。
「偏屈で人使いが荒くて子供っぽいあなたを、愛しています。どれだけ胸を馬鹿にされても――悔しいけど、好きなんです。……っ、狂おしい。先生が、言葉とは裏腹に私を求めてくるから」
悩ましげに息を吐いて眉根を寄せ、涙が溜まった目を儚げに伏せるエリスは扇情的だった。加虐心と征服欲、そして庇護欲を刺激して陽根の猛りを増長させる。
「エリス……ッ」
名前を呼ばれるのはまだくすぐったい。それだけで蜜奥がくすぶるので世話がない。
好きなのだと認めてしまえば身も心も楽になった。体のほうはこれまでよりもさらに快楽を得やすくなり、肉茎がわずかにうごめくだけでも悦びが打ち広がる。
「ぁ、あっ」
喘ぎながらジェラルドの顔を見やると、いままで無意識に抑えていたからか彼への愛しさでいっぱいになった。
こんな男、嫌いだ。そう思っていたはずなのに、手のひらを返したように正反対の感情が流れ込んできて埋め尽くす。
好きなのだ。底意地の悪い彼のことが。そういう――意地の悪さや素直さに欠けるという点では、自分もジェラルドと競えるのかもしれない。
ジェラルドが大きく息をつく。熱い吐息が頬に吹きかかる。
(なにを考えているんだろう?)
美しい面《おもて》を悩ましげに歪めているさまはどこかドラマティックだ。
「なにを……思って、ますか」
尋ねると、幾分か律動が緩やかになった。
「きみのナカ、気持ちいい……ッ」
エリスは目を丸くする。この男の脳内には肉欲しかないのか。
「も、もうちょっと夢のある回答を――っ、ん!」
つべこべうるさい、と言わんばかりにジェラルドはエリスの内奥を突き上げる。
「伝わら、ないか……、っ?」
――なにを。
――愛が?
体だけは初めから深くつながって、互いに気持ちよくなって。心を通わせるまでにはずいぶんと遠まわりをしてしまった。
ジェラルドが短く息を吸って、そうかと思うとまた体内がビクビクと打ち震えた。
(……いつもより、早い)
果てが早いのは二人とも同じで、エリスもまた花芽を核とした絶頂に襲われていた。そこには触れられてもいないのにご苦労なことだ。
「どうしていつも……意地悪ばかり、するんですか?」
小さな胸に顔をうずめるジェラルドにエリスはふと尋ねた。
「……俺の存在をなによりもきみに深く刻み込みたいからだ」
くぐもった声で告げられ、エリスはやれやれと嘆息したあとで穏やかに目を細める。
「本当……子どもみたい」
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「っ、なぜよけいに泣くんだ。泣き止ませたくて告白したというのに」
いたわるように目尻に指を添えられ、そんな優しい仕草にも歓びが込み上げて感極まってしまう。
「ぅ、くっ……。だって……先生がいきなり素直になるから……! ……嬉しくて」
すう、はあっと短く呼吸しながらエリスは続ける。
「私……もっと早く、素直になればよかった」
ジェラルドの瞳をのぞき込む。翡翠色の瞳はいつも優しさをたたえていた。よけいな一言にごまかされてそれが見えなくなっていただけだ。
本当は知っている。わかっていたけれど、知らないふりをしていたのだと思う。
郷里に帰ったときはわざわざ迎えに来てくれた。
病院勤務で寂しいときは会いに来てくれた。
――いつも全力で、たとえこちらがヘトヘトになっても、体を通して愛を伝えてくる。
涙を浮かべたままエリスはほほえむ。
「偏屈で人使いが荒くて子供っぽいあなたを、愛しています。どれだけ胸を馬鹿にされても――悔しいけど、好きなんです。……っ、狂おしい。先生が、言葉とは裏腹に私を求めてくるから」
悩ましげに息を吐いて眉根を寄せ、涙が溜まった目を儚げに伏せるエリスは扇情的だった。加虐心と征服欲、そして庇護欲を刺激して陽根の猛りを増長させる。
「エリス……ッ」
名前を呼ばれるのはまだくすぐったい。それだけで蜜奥がくすぶるので世話がない。
好きなのだと認めてしまえば身も心も楽になった。体のほうはこれまでよりもさらに快楽を得やすくなり、肉茎がわずかにうごめくだけでも悦びが打ち広がる。
「ぁ、あっ」
喘ぎながらジェラルドの顔を見やると、いままで無意識に抑えていたからか彼への愛しさでいっぱいになった。
こんな男、嫌いだ。そう思っていたはずなのに、手のひらを返したように正反対の感情が流れ込んできて埋め尽くす。
好きなのだ。底意地の悪い彼のことが。そういう――意地の悪さや素直さに欠けるという点では、自分もジェラルドと競えるのかもしれない。
ジェラルドが大きく息をつく。熱い吐息が頬に吹きかかる。
(なにを考えているんだろう?)
美しい面《おもて》を悩ましげに歪めているさまはどこかドラマティックだ。
「なにを……思って、ますか」
尋ねると、幾分か律動が緩やかになった。
「きみのナカ、気持ちいい……ッ」
エリスは目を丸くする。この男の脳内には肉欲しかないのか。
「も、もうちょっと夢のある回答を――っ、ん!」
つべこべうるさい、と言わんばかりにジェラルドはエリスの内奥を突き上げる。
「伝わら、ないか……、っ?」
――なにを。
――愛が?
体だけは初めから深くつながって、互いに気持ちよくなって。心を通わせるまでにはずいぶんと遠まわりをしてしまった。
ジェラルドが短く息を吸って、そうかと思うとまた体内がビクビクと打ち震えた。
(……いつもより、早い)
果てが早いのは二人とも同じで、エリスもまた花芽を核とした絶頂に襲われていた。そこには触れられてもいないのにご苦労なことだ。
「どうしていつも……意地悪ばかり、するんですか?」
小さな胸に顔をうずめるジェラルドにエリスはふと尋ねた。
「……俺の存在をなによりもきみに深く刻み込みたいからだ」
くぐもった声で告げられ、エリスはやれやれと嘆息したあとで穏やかに目を細める。
「本当……子どもみたい」