伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 《 第五章 05

 エリスを脅迫し毒を盛った使用人は解雇状を突きつけられるなりすぐに荷物をまとめて屋敷を去ったとニーナに聞いた。突然の解雇にもかかわらず何の反発もなかったのはやはり思い至ること――後ろめたさがあったからだろう。


「……なにをしている」

 診察のためにエリスが寝泊まりしているゲストルームを訪ねると、当の彼女はベッドではなく窓際にいた。その手には雑巾らしきものが握られていて、窓ガラスを拭いているようだった。
 いかにも「しまった」というような表情を浮かべてエリスは言いわけをする。

「私、もうすっかり元気ですよ。……月のものも、きましたし」
「……そうか。いや、とにかくベッドに入れ。診察する」

 寝間着姿のエリスは小さく「はい」と返事をしてベッド端に腰を下ろす。
 診察室を訪れる患者にするのと同じようにジェラルドは心拍を測ったり胸の音を聞いたりと一通りの診察を行なった。

「……明日からはまた自由に動きまわっていい」

 そう言いながら聴診器を耳から外して肩にかけるとエリスはぱあっと表情を明るくさせた。

「本当ですか。ありがとうございます。よかった……もう退屈で仕方がなかったんですよ」
「明日から、だからな。今日はまだ寝ていろ」

 明るくなった顔がまた暗くなる。エリスは不満げに唇を尖らせている。

「……ああ、ここを診るのを忘れていた」

 診察のためにはだけていたシュミーズの前を必要以上にグイッと大きく両手で開き、あらわになった薄桃色の屹立に聴診器のダイヤフラムを押し付ける。

「ちょっ、先生! 耳に当ててないじゃないですかっ、聴診器なのに……!」

 丸い膜面で乳首の根もとをクイクイと押してみると、そこはみるみるうちに硬くしこった。
 ジェラルドはごくりと喉を鳴らす。妊娠はしていないのだから、性感帯を刺激しても問題ない。ただ、病み上がりには違いないからほどほどにしなければ。

「ゃ……っ、やめてください、先生」
「だが……きみのココはずいぶんと聴診器をお気に召したようだ」
「んぁっ……!」

 乳輪よりも大きな丸でそこに蓋をする。硬い乳頭はダイヤフラムに押しつぶされまいと抵抗しつつも気持ちよさそうにその下で踊っている。

(……楽しい)

 ジェラルドは下半身に熱が集まるのを感じながら、聴診器で乳首をいじられて喘ぎもだえるエリスを見て愉しんだ。

(いけないな……。やめられなくなってしまう)

 孕んでいるかも、と思い自制していたぶんよけいにエリスを求めてしまうのだが、堪えるしかない。彼女に無理はさせたくない。
 しかしやはり、エリスの柔肌を目の当たりにしてしまうとどうしようもなく貪り尽くしたくなる。

「……少しだけ、いいか」
「――っ!」

 聴診器を引っ込めて彼女の肩をつかむ。

「いつも、了解なんて取らないじゃないですか。どうなさったんですか? らしくないですよ」

 ああ、いつもの減らず口を聞くと安心できる。すっかり元気になったようだ。
 無意識に口もとがほころんでいたらしく、エリスはますます怪訝な顔になった。

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