伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 《 終 章 05

 ジェラルドはガラにもなく薄くほほえみ、エリスの背に腕をまわした。編み上げの紐をするするとほどいていく。

「せ、先生……っ! お水を飲んで酔いを覚ましたほうがいいです」

 甘い言葉ばかりささやきかけてくるジェラルドにエリスは戸惑いを隠せない。こんな状態で肌を重ねてしまったらきっと――。
 想像するだけで羞恥の炎が内側で燃え上がった。しかしエリスの意に反して、ジェラルドはドレスを乱していく手を一向に止めない。

「ふっ……」

 コルセットがゆるむのと同時に嘆息する。そもそも着け慣れていないそれの拘束はゆるまったものの、ホッとしているいとまはない。ジェラルドの両手がシュミーズの肩紐をずるりと下げ、あらわになった薄桃色の粒をとらえる。

「ぁっ」
「もうこんなに硬くして……。ほら、俺の指を懸命に弾いてる。ああ、可愛くてたまらない」
「いっ、言わな……で、ぅっ」

 彼の猫なで声に鳥肌が立った。嫌悪からではない震えが肢体の先端までひた走り、ジェラルドの体の両側についていた手に力が入らなくなる。
 ふだんは無造作な銀色の髪の毛が額にかからないよう後ろへ撫で付けてあるせいか、ジェラルドがうっとりと笑みを深めるとまるで知らない男性のようだった。言動にしても、いくら酒に酔っているからといってこれほどまで変わるものなのか。

「あ、あなたは……本当に……先生、ですかっ?」

 よもや先日の私のように誰かと成り代わってしまったのでは、と勘ぐってしまう。

「……? おかしなことを訊くんだな。……そうだな、そろそろその『先生』というのはやめてもらいたい」
「やっ……!」

淡いピンク色の屹立を急に強くつままれてつい大きく喘ぐ。

「名前を……呼んでくれ」

 懇願してくるその声音に背すじがピリリと震える。

「い、いまさら……そんな……」

 いまでさえ優しくされて恥ずかしいというのに、名前を呼ぶなどもってのほかだ。照れくさい。
 ジェラルドはエリスに名前を呼ばせるのをあきらめたのか、それ以上は強要せずその代わりに彼女の脇に両手をくぐり込ませて引き上げた。

「――っ!?」

 突然のことに目を白黒させる。彼の顔の前に胸をさらす恰好になり、このあとなにをされるのか――予想が外れることはまずないだろう。
 予定調和さながらジェラルドは赤い舌をのぞかせてエリスのつぼみの片方を下からつつく。

「あ、ァッ」

 乳頭に触れた舌はいつもどおり意地が悪かった。探るようにツンツンと先端をつついてはようすをうかがい、エリスがわずかでも身をよじると屹立の根もとを舐めにやってくる。

「ゃっ、う……んっ、ん!」

 ザラリとした舌の感触はたまらない。体の揺れは上半身だけにとどまらず、腰までもくねくねと動いてしまう。
 ジェラルドはもだえるエリスの尻をつかんで撫でまわした。ドレスは下半身でダマになっているから、スカートの裾をめくり上げてドロワーズを引き下ろしてからの尻への接触だ。それがまたエリスの内なる快感を呼び覚ます。連鎖反応を起こさずにはいられない。エリスの蜜口は決壊寸前だ。

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