夕闇の王立図書館 《 番外編 02

「……っん、ん!」
 先ほどとは比べものにならないほど濃厚な口付けだ。入り込んできた舌は官能的で、すぐに絡め取られていっさいの思考が停止する。
「ん……っふ、ぅ……んっ!?」
 背中のくるみボタンをはずされているのがわかって、アンジェリカは目を見ひらいた。まさか彼は、こんなところで性欲を満たそうとしているのだろうか。
「クリフッ、やめ……っ、あ……っ!」
 無駄のない仕草でドレスを脱がされてしまい、コルセットすらもあっという間に解かれて上半身があらわになる。クリフはアンジェリカのネックレスを指でたどり、その先のふくらみに指を沈めた。
 王城の庭の木々は夜風で揺れてざわめいていた。ひんやりとした外気にさらされている乳房を隠そうとアンジェリカは両腕でそれを覆ったけれど、隠し切れていない部分を艶かしく指でたどられている。
「や……っぅ、ん」
 クリフが触れた箇所が熱を帯びていく気がした。月明かりでは彼の表情はよくわからない。そもそも、羞恥で顔を上げることができないから、あたりの明るさは関係ないのかもしれない。
「思ってたより、ずっと柔らかい。アンジェの素肌は」
「ん、く……っゃ、や」
「陶器みたいになめらかなのに、なんでこんなに柔らかいんだろ」
 頬をすり寄せ、クリフはアンジェリカの耳たぶを舐め上げた。濡れたところに熱い吐息がかかって、身震いしてしまう。
「……寒い?」
「ん……っ、ぁ、すこ、し……」
 夜風はいまの季節にしては涼しすぎるくらいだった。身体の芯は熱いのに、表皮だけは冷めているような、妙な感覚に陥っていた。
 クリフはタキシードの上着を脱いで、アンジェリカの肩に羽織らせた。ドレスはどんどん脱がされていくというのに、矛盾している。
「あ……だ、め……っん、ん!」
 ドレスを地面に落とされ、ドロワーズだけになる。オープンクロッチだから股間は無防備にひらいている。そこに指を添えられると、すぐに茂みが彼の指に触れる。
 身につけているものは肩に羽織ったタキシードと下穿きのドロワーズだけという、なんとも滑稽な格好に耐えられなくて、アンジェリカは身が焦げる思いだった。
「クリフ、やめて……! っぅ、ん……っ、こんな、格好……。恥ずかしい……っ」
「それは、全部脱がせて欲しいってこと? でもアンジェ、寒いんでしょ」
「ああっ、あ……そこ、だめ……っふ、あッ!」
 割れ目のなかの突起をツンッと突かれ、アンジェリカは彼の手をどけようと手を伸ばした。しかしそのすきにもう片方の手で上半身のふくらみをわしづかみにされてしまった。
「ん、ア……ッ、や、やぁ……っ!」
 クリフは乳房をグニャグニャとあらゆる方向に揉み込みながら指のあいだで先端をひねり、同時に裂け目の豆粒も指でつまんでこねた。
「気持ちいいの? 嬉しそうに腰が動いてるよ」
 彼の声音がいっそう官能を刺激した。一定のリズムを刻む愛撫はすぐにアンジェリカの身体を高める。
「アッ、ン、ンン……ッ、っぅ、ふぅぅっ!」
 隘路は震え、脈打ちながらさらなる蜜を噴き出す。
 クリフは滴ってきたみだらな粘液を指に絡め、見せつけるように舐め上げた。
「あ……。なか、挿れちゃ…いや……っゃ、あ、んんっ!」
 細長い指はヌプヌプと水音を発しながら蜜壺のなかに挿し込まれていく。アンジェリカは口では嫌と言いながらも、膣壁をうごめく指の快感に酔い始めていた。
「あ……ッ、クリフ……、んんっ!」
 自他問わず秘めやかな箇所に指が入るのは初めてだった。そもそも、そんなところに指が入っていくこと自体が信じられない。それなのに、クリフの指はかなり奥まで到達していて、驚きと快感がないまぜになっていた。
「アンジェのなか、窮屈で温かくて……ここに僕のを挿れたら、すごく気持ちいいんだろうな」
 語りかけられているのかそれともひとりごとなのか、判別がつかない。
 耳もとで熱っぽくささやいたクリフはだらに指をねじ込ませてかきまわした。
「ふっ、うう……っん、く……ッ!」
アンジェリカは喘ぎながら、先ほどの彼のつぶやきの意味を考える。
(私のなかに、クリフのものを……?)
 性行為がどのようなものなのか、女学校時代に少しだけ習ったから知っている。けれど自分の性器がどうなっているのかすら知らなかったくらいだから、男性のそれを見たこともない。
「あ、の……ん、クリフ……っ」
「なあに。もっと強くして欲しい?」
「ちが……っ、う……! クリフの……いれ、るの……? 私の、なかに」
「うん。いますぐにでもそうしたいけど、もう少しだけ指で慣らしてからにする。……怖い?」

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