夕闇の王立図書館 《 番外編 04

 並んで歩いているだけだというのに、身体が甘く疼いてなかのほうが震えてしまうのはなにかを期待しているからなのだろうか。
(いつもどおりにしなくちゃ、へんに思われちゃう)
 寝室の前で立ち止まり、アンジェリカは口をひらく。
「えっと……どうぞ。私はここで待ってるから、先に着替えてきていいわよ」
 平静を装ってほほえむのと同時に腕がゆっくりと伸びてきて、アンジェリカの身体は壁に挟まれて囲い込まれた。
「わざわざ部屋の外で待ってなくてもいいよ。一緒に着替えればいい。水遊びをしたときは、いつもそうしてたよね」
「そ、そんなの……」
 小さい頃の話なのに。
 思ったことがすぐに口に出るアンジェリカなのだが、いまばかりはそうもいかず言葉を詰まらせていた。すると、身体を抱き寄せられて強引に寝室へと入れられてしまった。
 クリフに腕をつかまれたまま、おぼつかない足取りで寝室に入る。薄暗い室内では彼の顔を見上げても表情がわからなくて、粗野にドサリとベッドに組み敷かれ、少しばかり恐怖を覚えた。
「や……っ、自分で、着替える……から、ぁっ!」
「着替えるだけだと、本気で思ってる?」
 クリフの手が太ももをたどる。秘めやかな箇所を目指しているのは明白だ。
「あっ……!」
「さっきさわったときよりもずっと濡れてるね。期待してたんでしょ? 僕にいじられるのを。じゃなきゃこんなにグッチャグチャになってるはずがない」
「ああっ、あ……っんん!」
 みるみるうちにドレスとコルセットを剥ぎ取られ、先ほどは残したままだったドロワーズも今度は脱がされて一糸まとわぬ姿になった。
 部屋の灯りをつけるひまはなかったから、裸体はそんなにハッキリとは見られていないはずだ。それでもやはり視線が気になる。両腕を正面に持ってきて隠す。
「よく見せて、アンジェの身体。隠さないで」
 窓から射し込む月明かりに照らされた彼の髪は燃え上がる太陽を思わせた。真紅の髪の毛が胸もとに触れるとくすぐったくて、思わず声が漏れ出る。
「ん……っ、や……っぁ」
 ゆっくりと、それでいて力強く両腕をベッドに押しつけられ、アンジェリカは無防備な格好に心許なくなった。しかしその危うさによけいに官能を刺激される。ふくらみの先端を舌先でツンッと突かれると、それだけで媚蜜は次々にあふれ出ていく。
「や、ん……っ、ふ……っ!」
 ちゅ、ちゅっと小鳥のように乳頭を啄ばまれ、アンジェリカはそのたびに身を反らせた。
 両腕を押さえていたクリフの手はいつの間にか下半身に伸びていた。ゆるゆると花弁をかき乱されると、たまらなくなって嬌声が漏れ出てしまう。
「ねえ、気持ちいい? アンジェ」
「う……っく、ふぁっ」
 あらためて聞かれるとよけいに恥ずかしくなる。素直には答えられない。
「ココ、どう? ほかのところよりも感じる?」
「んっ、んん……ッ! っや、そこ……ゃ、アアッ!」
 なんの遠慮もなしに蜜壺へ侵入してきた指がお腹側を突くと、悲鳴を上げたくなるほどの快感がせり上がって、つい大きな声で喘いでしまった。
 しかしそれは彼にとっては嬉しい出来事だったようだ。悪戯が成功したときのような顔をして口角を上げている。
「ああっ……ん、っく、ア、アッ……!」
 いったいいつから彼はこんな指戯をする男になったのだろう。ついこのあいだまで、食欲ばかりが旺盛な男の子だったというのに。
(ううん、私が気付いてなかっただけなのかもしれない)
 ビクンビクンと意図せず痙攣する身体を鎮めるようにアンジェリカは親友の弟を見つめた。
 あらわになっていく、引き締まった上半身。騎士団の鍛錬の賜物なのだろう。鍛え上げられた筋肉質な身体だ。
(遊びと思われても、彼が本気じゃなくても、いい……。クリフのものが欲しい)
 そそり立つ肉茎は異形に見えた。顔立ちはまだいとけなさを残しているから、ひどく不釣り合いだ。
 脚をひらいていくクリフの両腕を受け入れ、アンジェリカは身がまえる。
(やっぱり、初めては痛いのかしら)
 雄棒の切っ先が蜜口に触れる。ビクンと両脚が跳ねる。
「アンジェ、肩の力を抜いて」
 さとすように言って、クリフは上半身をピタリと密着させて唇を覆ってきた。
 緩慢に舌を絡められると、そのまま眠りに落ちてしまいそうなほど安らいだ。けれどそのあとは壮絶だった。
「っう、ん、ンンッ――!」
 下半身にひどい痛みを感じて、アンジェリカは閉じていた目を見ひらいた。
「……痛い、よね」
「う……っく、ふ」
「僕の指、噛んでていいよ。背中も、思いきり握って」

前 へ    目 次    次 へ