鈴虫がしとやかに鳴く夏のある夜、初見 杏樹は晴翔とともにひと気のない公園を歩いていた。兄の結婚式にそろって出席した帰り道だ。式場からマイクロバスに乗っていったんは実家に帰ったものの、晴翔の家へ泊りに行く途中である。
「はー……千夏さん、綺麗だったなぁ」
兄のお嫁さんで義理の姉となった千夏は美しい女性で、純白のウェディングドレスは彼女の白い肌にとてもよく映えていた。ドレスにはやはり憧れる。千夏の姿を思い出して、杏樹は夢を馳せていた。
「今度、式場に下見に行ってみようか」
となりを歩いていた晴翔がにこやかに言う。杏樹は顔をほころばせた。
「うん、行くっ! 楽しみになってきた」
つい子どものようにはしゃいでしまって、星空を見上げながら軽い足取りで小道を歩く。
「ちゃんと前を向いて歩かないと転ぶよ」
「だーいじょう……っぶ!?」
星空が歪む。小石にでもつまずいたのか、杏樹は晴翔が案じていた通りの行動をしてしまった。顔面を強打しなかったのは、彼がとっさに身体を支えてくれたからだ。
「あ、ありがと……晴くん」
横向きに抱き締められていた。耳に当たる胸板から聞こえてくる鼓動は彼のものなのか自分のものなのかわからない。
「嫁入り前のきみに怪我なんてさせられないからね」
やけに艶めいた声音だった。もともと彼の声は魅惑的だから、耳もとでささやかれるとたまらない。淫らなことを言われたわけではないのに、下半身がキュンと疼いてしまうのが情けなかった。
「……あの、晴くん?」
まだほんの数分なのかもしれない。けれど晴翔は杏樹を抱き締めたまま動こうとしない。不思議に思って見上げると、視線が合った瞬間に唇まで合わさった。
「……ん」
ねっとりと絡みつく舌が心地よいが、何だか落ち着かなかった。公園にはほかに誰も見当たらないけれど、もしかしたら誰かいるかもしれない。そう思うと、この口付けは早く終わらせなければいけない気がした。
「……晴くん、早く帰ろう」
薄暗い外灯に照らされた腕時計を見る。時刻はちょうど8時をまわったところで、夏とはいえ陽はすっかり沈んで真っ暗だ。彼の腕をかいくぐって身体を離そうとする。
「杏樹のウェディングドレス姿を想像してたら、きみの身体にさわりたくなった。少しだけ、触れさせて」
「え……っ!? っや、晴くん……、なに考えてるの」
杏樹のピンク色のドレスは丈が短かった。20代前半に購入した代物だからそうなのだけれど、結婚式の前日にそのことに気がついたから別のものを用意する時間がなかったのだ。いまはそれをひどく後悔している。
「っあ……だ、め……こんな、ところで」
丈の短いワンピースのすそは簡単にめくれ上がり、晴翔の指はたやすくショーツの端を持ち上げる。
「や……ぁ、さわっちゃ……いや」
「んー……? 杏樹のココは、そうは言ってないよ」
道の往来でこのようなことをしている自分と彼が信じられない。花芽を突つかれただけで愛液をあふれさせている自身はもっと信じられない。
「誰か、きたら……どうするの。……んっ、ンン」
くちゅ、ぬちゅっという淫猥な蜜音が響く。鈴虫の音はなぜか遠のいて、蜜壺から発せられる音ばかりが気にかかった。
「はー……千夏さん、綺麗だったなぁ」
兄のお嫁さんで義理の姉となった千夏は美しい女性で、純白のウェディングドレスは彼女の白い肌にとてもよく映えていた。ドレスにはやはり憧れる。千夏の姿を思い出して、杏樹は夢を馳せていた。
「今度、式場に下見に行ってみようか」
となりを歩いていた晴翔がにこやかに言う。杏樹は顔をほころばせた。
「うん、行くっ! 楽しみになってきた」
つい子どものようにはしゃいでしまって、星空を見上げながら軽い足取りで小道を歩く。
「ちゃんと前を向いて歩かないと転ぶよ」
「だーいじょう……っぶ!?」
星空が歪む。小石にでもつまずいたのか、杏樹は晴翔が案じていた通りの行動をしてしまった。顔面を強打しなかったのは、彼がとっさに身体を支えてくれたからだ。
「あ、ありがと……晴くん」
横向きに抱き締められていた。耳に当たる胸板から聞こえてくる鼓動は彼のものなのか自分のものなのかわからない。
「嫁入り前のきみに怪我なんてさせられないからね」
やけに艶めいた声音だった。もともと彼の声は魅惑的だから、耳もとでささやかれるとたまらない。淫らなことを言われたわけではないのに、下半身がキュンと疼いてしまうのが情けなかった。
「……あの、晴くん?」
まだほんの数分なのかもしれない。けれど晴翔は杏樹を抱き締めたまま動こうとしない。不思議に思って見上げると、視線が合った瞬間に唇まで合わさった。
「……ん」
ねっとりと絡みつく舌が心地よいが、何だか落ち着かなかった。公園にはほかに誰も見当たらないけれど、もしかしたら誰かいるかもしれない。そう思うと、この口付けは早く終わらせなければいけない気がした。
「……晴くん、早く帰ろう」
薄暗い外灯に照らされた腕時計を見る。時刻はちょうど8時をまわったところで、夏とはいえ陽はすっかり沈んで真っ暗だ。彼の腕をかいくぐって身体を離そうとする。
「杏樹のウェディングドレス姿を想像してたら、きみの身体にさわりたくなった。少しだけ、触れさせて」
「え……っ!? っや、晴くん……、なに考えてるの」
杏樹のピンク色のドレスは丈が短かった。20代前半に購入した代物だからそうなのだけれど、結婚式の前日にそのことに気がついたから別のものを用意する時間がなかったのだ。いまはそれをひどく後悔している。
「っあ……だ、め……こんな、ところで」
丈の短いワンピースのすそは簡単にめくれ上がり、晴翔の指はたやすくショーツの端を持ち上げる。
「や……ぁ、さわっちゃ……いや」
「んー……? 杏樹のココは、そうは言ってないよ」
道の往来でこのようなことをしている自分と彼が信じられない。花芽を突つかれただけで愛液をあふれさせている自身はもっと信じられない。
「誰か、きたら……どうするの。……んっ、ンン」
くちゅ、ぬちゅっという淫猥な蜜音が響く。鈴虫の音はなぜか遠のいて、蜜壺から発せられる音ばかりが気にかかった。