冬のおとずれを予感する北風が吹くなか、杏樹は小さな手を引いて歩いていた。彼女のもう片方の手を引くのは愛しい夫。身をかがませて、歩きにくそうにしながらもヨチヨチ歩きの娘と手をつないでいる。
「あ、ごめん。ちょっと写真を撮らせて」
晴翔はそっと娘の手を放して、首から下げていた一眼レフをかまえる。
「もう、まだ入ってもいないのに。そんなにガツガツ写真を撮ってたら、楽しめないよ」
杏樹は不満をあらわに口を尖らせて言った。小児科医である晴翔の貴重な休みを利用して家族でおとずれているのは、西洋の街を模したテーマパークだ。いまは入場ゲートの手前のところで立ち止まっている。
「まあまあ、そう言わず。ほら、ポーズポーズ」
杏樹は娘を抱き上げて仕方なしにカメラのほうを向く。
「もうちょっと右に……うん、そこ。杏ちゃん、もっと笑って」
「はいはい」
どうやら晴翔は遠くにそびえたつ大きな塔をフレームにおさめたいらしい。それからしばらくあちらこちらと細かく指示を出されて歩き、一枚の写真を撮るのにだいぶん時間を消費してしまった。
まだまだ撮りたらなそうな晴翔を言いくるめて入場ゲートをくぐり、受付で宿泊の荷物を預けた。ありがたいことに、荷物は宿泊予定の園内ホテルまでポートしてくれるらしい。身軽になった杏樹たちはベビーカーを借りて園内をまわりはじめる。
「ああ、いいロケーションがたくさんだ。杏ちゃん、晴杏(はるな)といっしょにそこに座って」
「はーるーくん。いいかげんにして。ねえ、晴杏からもパパになんとか言ってよ」
「ぱぱー、ぱーぱー」
まだ単語しか口にできない娘に語りかける。そこをパシャリと撮られ、
「晴くんっ! 怒るよ。写真ばっかり撮ってないで、ちゃんとみんなで楽しもうよ」
「楽しいよ? 怒ってる杏ちゃんもかわいい」
こりずにシャッターを切る晴翔に向かって大きくため息をつき、杏樹はベビーカーを押しながらスタスタと歩いた。
それから晴翔と押し問答をしながら園内をまわり、早めに夕食をとってホテルにチェックインした。歩き疲れて眠そうな娘のためにあわただしく入浴をすませて寝かしつける。
「……晴杏、寝た?」
「うん。ぐっすり寝てる」
クイーンサイズベッドの中央に大の字で寝転がる娘に毛布をかけながら杏樹は晴翔に答えた。
「そっか。ふー……今日はホント、いい写真がいっぱい撮れたな。あ、でもまだ撮れてないのがある」
大きなカウチに座ってデジタルカメラを操作する晴翔。バスローブ姿で脚を組んでいるから下半身は はだけている。
「なあに? あれだけさんざん撮りまくってたのに、まだなにか心残りがあるの? 晴杏はもうぐっすり寝ちゃったから、撮りに行くなら明日にしてよ」
「外に行かなくても撮れるよ。杏樹、こっちにおいで」
手招きする晴翔をけげんな顔で見つめながら近づく。すると、
「ひゃっ! なに、晴く……っ」
手首をつかまれてカウチに押し倒される。杏樹のバスローブをはだけさせながら晴翔はささやく。
「杏樹のエッチな写真を撮り忘れてた。どんなポーズをさせようかな」
彼のケモノスイッチが入ってしまった。杏樹は胸もとを両手で隠しながら、これからされる行為に期待してほほを赤く染めた。
「あ、ごめん。ちょっと写真を撮らせて」
晴翔はそっと娘の手を放して、首から下げていた一眼レフをかまえる。
「もう、まだ入ってもいないのに。そんなにガツガツ写真を撮ってたら、楽しめないよ」
杏樹は不満をあらわに口を尖らせて言った。小児科医である晴翔の貴重な休みを利用して家族でおとずれているのは、西洋の街を模したテーマパークだ。いまは入場ゲートの手前のところで立ち止まっている。
「まあまあ、そう言わず。ほら、ポーズポーズ」
杏樹は娘を抱き上げて仕方なしにカメラのほうを向く。
「もうちょっと右に……うん、そこ。杏ちゃん、もっと笑って」
「はいはい」
どうやら晴翔は遠くにそびえたつ大きな塔をフレームにおさめたいらしい。それからしばらくあちらこちらと細かく指示を出されて歩き、一枚の写真を撮るのにだいぶん時間を消費してしまった。
まだまだ撮りたらなそうな晴翔を言いくるめて入場ゲートをくぐり、受付で宿泊の荷物を預けた。ありがたいことに、荷物は宿泊予定の園内ホテルまでポートしてくれるらしい。身軽になった杏樹たちはベビーカーを借りて園内をまわりはじめる。
「ああ、いいロケーションがたくさんだ。杏ちゃん、晴杏(はるな)といっしょにそこに座って」
「はーるーくん。いいかげんにして。ねえ、晴杏からもパパになんとか言ってよ」
「ぱぱー、ぱーぱー」
まだ単語しか口にできない娘に語りかける。そこをパシャリと撮られ、
「晴くんっ! 怒るよ。写真ばっかり撮ってないで、ちゃんとみんなで楽しもうよ」
「楽しいよ? 怒ってる杏ちゃんもかわいい」
こりずにシャッターを切る晴翔に向かって大きくため息をつき、杏樹はベビーカーを押しながらスタスタと歩いた。
それから晴翔と押し問答をしながら園内をまわり、早めに夕食をとってホテルにチェックインした。歩き疲れて眠そうな娘のためにあわただしく入浴をすませて寝かしつける。
「……晴杏、寝た?」
「うん。ぐっすり寝てる」
クイーンサイズベッドの中央に大の字で寝転がる娘に毛布をかけながら杏樹は晴翔に答えた。
「そっか。ふー……今日はホント、いい写真がいっぱい撮れたな。あ、でもまだ撮れてないのがある」
大きなカウチに座ってデジタルカメラを操作する晴翔。バスローブ姿で脚を組んでいるから下半身は はだけている。
「なあに? あれだけさんざん撮りまくってたのに、まだなにか心残りがあるの? 晴杏はもうぐっすり寝ちゃったから、撮りに行くなら明日にしてよ」
「外に行かなくても撮れるよ。杏樹、こっちにおいで」
手招きする晴翔をけげんな顔で見つめながら近づく。すると、
「ひゃっ! なに、晴く……っ」
手首をつかまれてカウチに押し倒される。杏樹のバスローブをはだけさせながら晴翔はささやく。
「杏樹のエッチな写真を撮り忘れてた。どんなポーズをさせようかな」
彼のケモノスイッチが入ってしまった。杏樹は胸もとを両手で隠しながら、これからされる行為に期待してほほを赤く染めた。