双鬼と紅の戯曲 ~君主は秘かに専属侍女を愛でる~ 《 序章 04

 このところ吸血することよりもそういった欲のほうが強くなっているような気がする。
 ゆるくなった着物の衿をなかの襦袢《じゅばん》ごと左右に開いて肩から落とす。
 なめらかな肌に両手を添え、いましがた血をすすった首すじから鎖骨、ふくらみのほうへと撫で下ろす。
 鈴音はよほど眠りが深いのか、ぴくりともしない。穏やかな寝息だけが聞こえる。

(日に日に女性らしくなっていく)

 胸のふくらみはとくにそうだ。
 極夜は喉を鳴らし、柔らかくまろやかな乳房を手にすっぽりとおさめてゆっくりと揉みしだく。

「んん……」

 鈴音がうなりながら身じろぎすると、極夜は乳房をつかんでいた手をパッと放した。
 どきどきしながら、しばらくようすを見る。
 腕のなかで横向きになったまま、鈴音はまた「すぅすぅ」と寝息を立てている。
 極夜は「ふぅ」と息をつき、ふくらみの色づいた先端を指先でツンッとつつく。
 ざらついているようでしっとりとしたそこを指でつまんでこねるのが愉しくてたまらない。

(いつまででもさわっていたくなる)

 しなやかで柔らかい乳頭の感触はいつまでたっても飽きない。
 極夜は薄桃色の棘を指でいじりながら鈴音の体をそっと畳の上に寝かせる。

「ふ……」

 鈴音が反対側に寝返りを打ったので、彼女の体を飛び越えて顔が見えるほうに移動する。
 鈴音の胸もとに顔を寄せてからあらためて乳頭を指でつまみ、もう片方には舌を這わせた。
 鮮やかな色の胸飾りを口に含み、ちゅっと吸い立てる。
 自分でもわからない。なぜこのように――赤ん坊のように乳首を吸いたくなるのだろう。
 わからないが、こうすることで肉欲が満たされるのは間違いなかった。
 右の乳頭をちゅうちゅうと水音を立てて粒を舐めしゃぶり、左の乳房をぐにゃぐにゃと揉みまわす。
 胸のすべてをさんざんいじくりまわしたあとは、着物の裾を左右にかきわけて脚の付け根をあらわにする。
 力の入っていない両脚をそっと開かせ、浅い茂みや蜜のあふれ口、その上の小さな豆粒をしげしげと見つめる。
 小さな口はわずかに蜜をこぼしていた。乳首を刺激したことによる生理現象だろう。
 極夜は指先で蜜を絡め取り、すぐ上の肉粒に塗りつけた。鈴音が「んん」と声を漏らして眉根を寄せるものだから、あわてて手を引っ込めた。
 極夜は大きく息をつく。
 こうして鈴音の全身を隅々まで見まわすことが、吸血後の秘かな楽しみだ。
 彼女がこれを知ったらどういう顔をするだろう。あの漏れ出るような色っぽい声をもっと聞かせてくれるだろうか。

(いや……だめだ)

 聞いてみたいが、彼女が目覚めているときにこんなことをしたら――絶対に軽蔑される。
 だから、この愚行は決して知られてはならない。

 ――極夜は鈴音を人知れず愛でる。

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