双鬼と紅の戯曲 ~君主は秘かに専属侍女を愛でる~ 《 第三章 05

 じらされているのだという感覚のない鈴音はわけがわからずひたすら身もだえする。
 くねくねと体をよじる鈴音から牙を離し、極夜は両手で薄桃色をつまみ上げた。

「あぁっ!」

 思いがけず大きな声が出てあせる。
 極夜はより近くで嬌声を聞こうとしているのか鈴音の口もとに耳を寄せている。

「あ、ぁっ……やぁ、あぅっ」

 はしたない声が出るのを止められない。極夜が乳頭を指でこねくりまわすせいだ。

「硬くなってきた……」

 ぼそりと言って、極夜は親指と中指でつまんでいた硬いつぼみを人差し指で柔肉へ押し込めるようにしてつつく。

「ンンッ……!」

 鈴音は顔を上げ、しかしすぐにうなだれた。彼が自分の乳頭をつまんでいるのをまじまじと見てしまい、羞恥心が体の端々から込み上げてくる。
 もうこれ以上のことはないと思いたい。しかし、そうはならない。
 極夜は鈴音の体を抱え上げるようにして畳の上に寝かせた。
 秘めるべきところを真正面から見られることになり、ますます恥ずかしくなる。
 鈴音に馬乗りになった極夜は恍惚とした表情でふくらみをつかみなおし、その手で先端を際立たせた。そこへ、おもむろに顔を寄せる。

「――ッ!」

 彼がなにをするつもりなのか気がついた鈴音は仰向けに寝転んだまま身をくねらせたが、そうしたところでなにが変わるわけでもない。
 極夜は薄桃色の棘をペロリと一舐めする。その瞬間、甘いしびれがどこからともなく生まれて脳天へと抜けていった。

「ぁ、あっ……あぁっ」

 極夜は胸の尖りを愛でるのに夢中のようだった。舌を這わせていないほうは指で押しひねり、鈴音をいっそう喘がせる。
 彼の舌がいただきに這うたび、指で押しつぶされるたびに下半身がドクッと脈づく。これはいったいなんなのだろう。なにかおかしなことが起こっているのでは、と不安になる。

(でも……気持ちいい)

 しだいに羞恥心が抜けてきた。乳首をいじられることに慣れてきた、というのを認めてしまうのは、それはそれで恥ずかしいけれど、その通りだ。彼の愛撫を心地よく感じている。
 もっとめちゃくちゃにしてほしい、などと思ってしまって始末が悪い。
 極夜は鈴音の秘めた要望に応えるように、舌と指の動きを激しくさせた。胸飾りを口に含んで吸い上げ、もう片方のそれは指先で素早くなぶり倒す。

「んぁっ、う……あぁ、んんっ!」

 いてもたってもいられずバタバタと脚を動かすと、体をわずかに覆っているだけの着物が衣擦れの音を奏でた。それがずいぶんと卑猥なものに思えて、また官能を煽られる。

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