双鬼と紅の戯曲 ~君主は秘かに専属侍女を愛でる~ 《 第三章 06

 胸のつぼみをいじる手はそのままに、もう片方の手がするすると肌の上を滑って脚の付け根へ向かう。
 太ももの内側をさすられるものだから、くすぐったくなってもじもじと内股を動かした。
 大きな手のひらが茂みのあるほうへと伸びていく。

「ン……ふぅ……」

 彼がなにをどうするつもりなのかまったくわからない。ただ、ふだんは秘めている恥ずかしい箇所を暴かれるのでは、という漠然とした思いがあった。
 極夜は浅い茂みを指に絡めたあと、人差し指をすうっと振り下ろして裂け目を撫でたどった。

「んんっ!」

 触れられた箇所から甘い快感が生まれて頭のほうへ駆け上がってくる。
 他人には見せない秘めやかな箇所に触れられることで実感する。彼の気持ちまでも自分に向いているのだと思うと嬉しくて涙腺が熱くなる。
 ふと極夜が薄桃色の棘を舐めるのを中断した。

「あふれている」

 そうつぶやき、ふたたび乳頭を舐めしゃぶる。

「ふ、うぅ」

 彼といろいろな話をしたいと思っていたけれど、こうして一方的に聞かされるだけなのはなんだか恥ずかしい。

(よくわからないけれど……あふれている、っていうのはきっと淫らなことなのだわ)

 責められているわけではないと思う。だって、彼はどことなく嬉しそうだから。
 笑っているわけではない。嬉しい、と言ったわけでもない。それでも、長年一緒にいるからわかる。むしろいままで、なぜ彼の本心を理解できなかったのだろう。
 もしや好かれているのでは、と思うことは多々あったが――怖かったのだ。彼の気持ちを確かめることが。
 鈴音は極夜の背に腕をまわした。艶やかな黒髪を撫でまわす。

「ん――」

 鈴音の行動に驚いたらしい極夜が顔を上げる。薄茶色の瞳がわずかに朱を帯びていた。吸血のとき以外も瞳の色が変化するのだと、はじめて知った。

「嫌、でした……?」

 極夜はすぐに首を横に振る。何度もそうして、「嫌ではない」と訴えてくる。
 いままで遠慮して、できなかったことをたくさんしたい。
 もう決して、彼の紅い瞳から目を逸らさない。
 いつまでも見つめていたいし、見つめられていたい。

「愛しています」

 いままで伝えてこなかったぶん、想いが口からあふれだす。
 すると極夜は照れたようにほんの少し口角を上げた。そんな表情は新鮮で、自分だけに向けられたものだと思うとこちらまで顔がほころぶ。
 極夜は身を起こし、鈴音の唇をそっと塞ぐ。そのあいだも彼の両手は動き続けた。乳頭をいじり、蜜のあふれ口を指先がかすめ、その上にある豆粒に愛液を塗り込めていく。

「ん、んんっ……!!」


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