ぐいぐいと背を押されて歩く。裏庭の端を通り、露天の風呂へやってきた。
「ほら、脱いで脱いで」
オーガスタスはなんのためらいもなくリルの服を脱がせにかかる。
「ちょ、ちょっと……! やめて」
彼がリルの言うことを素直に聞いていたのは収穫のあいだだけだ。いまはリルを完全に無視して彼女の服を拭い去っていく。
「肩、こってるでしょ? 揉みほぐしてあげるから、ね?」
「……っ」
抵抗したところでどうせ結果は目に見えている。
「わ、わかったから……。自分で脱ぐわ。だからあなたも」
ふうっ、とため息をつくリルをオーガスタスは満足げに見おろし、彼自身も服を脱ぎ始めた。リルはオーガスタスに背を向けて、残りの衣服をハンガーに引っかけた。ハンガーは軒下にあるので、雨が降っても濡れない。リルはいつもそうして風呂に入っている。
いっぽうのオーガスタスは豪快だ。手早く服を脱ぎ、岩場に捨て置いた。リルはいつもそれを拾ってハンガーにかける。どうせ洗濯するのだからそのままにしておいてもよいのだが、なんとなく気になるのでそうしている。
「リル、早く」
オーガスタスはすでに湯のなかだ。返事はせずに、湯のなかへ入る。
「そんなところにいたんじゃ肩を揉めないよ?」
「……本当に肩だけなんでしょうね」
「んー……。それは、状況による」
リルは怪訝な顔をしてオッドアイの彼をにらむ。にらまれたほうのオーガスタスは、両手を顔の真横に持ってきた。おどけている。
「まあまあ。とにかくおいでよ」
「へんなこと、しないでよ。本当に疲れてるんだから、私。オーガスタスだってそうでしょう?」
「そうだね」
警戒して動かないでいると、オーガスタスのほうから近づいてきた。リルのうしろにまわり込んで、彼女の両肩をつかむ。
彼の手は熱い。ゆっくりと力を込められ、こった肩にはよく効いた。
「ねえ見て、リル。綺麗な夕陽だ」
「……ええ」
一日が終わる。今日は、彼と過ごすことができた。しかし明日はわからない。リルとオーガスタスはとても曖昧な関係だ。
(やだ……夕陽のせいね。なんだか哀しくなってきちゃった)
オーガスタスが真面目に肩を揉むものだから、リルはほかになにをするでもなく、不安に駆られた。そんな彼女の横顔をオーガスタスは不思議そうにのぞき込む。
「……リル。なにを考えてるの」
「べつに……なにも」
「そう……?」
肩を覆っていた両手がするするとふくらみのほうへ落ちていく。
「んっ……やめてったら」
「疲れ果てて元気がないみたいだから、こっていそうなところを揉んであげる。リルがいつもどおりになるように、ね。奉仕だよ、奉仕」
「やっ……!」
前 へ
目 次
次 へ
「ほら、脱いで脱いで」
オーガスタスはなんのためらいもなくリルの服を脱がせにかかる。
「ちょ、ちょっと……! やめて」
彼がリルの言うことを素直に聞いていたのは収穫のあいだだけだ。いまはリルを完全に無視して彼女の服を拭い去っていく。
「肩、こってるでしょ? 揉みほぐしてあげるから、ね?」
「……っ」
抵抗したところでどうせ結果は目に見えている。
「わ、わかったから……。自分で脱ぐわ。だからあなたも」
ふうっ、とため息をつくリルをオーガスタスは満足げに見おろし、彼自身も服を脱ぎ始めた。リルはオーガスタスに背を向けて、残りの衣服をハンガーに引っかけた。ハンガーは軒下にあるので、雨が降っても濡れない。リルはいつもそうして風呂に入っている。
いっぽうのオーガスタスは豪快だ。手早く服を脱ぎ、岩場に捨て置いた。リルはいつもそれを拾ってハンガーにかける。どうせ洗濯するのだからそのままにしておいてもよいのだが、なんとなく気になるのでそうしている。
「リル、早く」
オーガスタスはすでに湯のなかだ。返事はせずに、湯のなかへ入る。
「そんなところにいたんじゃ肩を揉めないよ?」
「……本当に肩だけなんでしょうね」
「んー……。それは、状況による」
リルは怪訝な顔をしてオッドアイの彼をにらむ。にらまれたほうのオーガスタスは、両手を顔の真横に持ってきた。おどけている。
「まあまあ。とにかくおいでよ」
「へんなこと、しないでよ。本当に疲れてるんだから、私。オーガスタスだってそうでしょう?」
「そうだね」
警戒して動かないでいると、オーガスタスのほうから近づいてきた。リルのうしろにまわり込んで、彼女の両肩をつかむ。
彼の手は熱い。ゆっくりと力を込められ、こった肩にはよく効いた。
「ねえ見て、リル。綺麗な夕陽だ」
「……ええ」
一日が終わる。今日は、彼と過ごすことができた。しかし明日はわからない。リルとオーガスタスはとても曖昧な関係だ。
(やだ……夕陽のせいね。なんだか哀しくなってきちゃった)
オーガスタスが真面目に肩を揉むものだから、リルはほかになにをするでもなく、不安に駆られた。そんな彼女の横顔をオーガスタスは不思議そうにのぞき込む。
「……リル。なにを考えてるの」
「べつに……なにも」
「そう……?」
肩を覆っていた両手がするするとふくらみのほうへ落ちていく。
「んっ……やめてったら」
「疲れ果てて元気がないみたいだから、こっていそうなところを揉んであげる。リルがいつもどおりになるように、ね。奉仕だよ、奉仕」
「やっ……!」