森の魔女と囚われ王子 《 第四章 06

 ぺろぺろっ、と素早く唇を舐められてひるむ。どうしてか、それだけで体の力が抜けてしまい、かたくなにうつ伏せを貫くつもりだったのに、たやすく仰向けにさせられてしまった。

「あ……っ!!」

 オーガスタスはリルの体に手際よく蔦を巻きつけていく。

「わ、私で遊ぶのはやめてって、言ってるでしょ……!」
「遊んでいるつもりなんかないよ?」
「なっ……。やっ、いや……!」

 黙っていろ、といわんばかりに両手首をつかまれ、頭上でひとまとめにされてしまった。手首には蔦が幾重にも巻きついている。

「オーガスタス……ッ」

 いつか彼が言っていた。――縛って目隠しをするのもいい、と。
 目隠しをされていないだけまだいいのかもしれないと思った矢先に、彼は有言実行する。

「はーい。目は隠しちゃうよ」

 トラウザーズのポケットからハンカチを取り出し、リルの目もとを覆っていく。
 リルはいよいよどうしようもなくなった。
 長い蔦はリルの全身に、木の幹にあったときと同じようにぐるぐると巻きついている。足だけは拘束されておらず、片方にそれぞれ蔦が這っている。自由に動かせるようになっているのは故意だろう。そこが閉じてしまっては、彼が愉しめないからだ。

(オーガスタスはいまなにをしているの……?)

 蔦でぐるぐる巻きにされてしまったものの、かといってなにかされるわけでもなく、放置だ。この妙な「間」が、どうにも耐えられない。リルは彼に呼びかける。

「ねえ、オーガスタス……?」
「……うん」

 呼びかけられたほうの彼はリルの体を視姦していた。口もとはゆるやかに弧を描いている。まるで芸術品を作り上げたかのような、満足気な表情を浮かべてる。

「ああ……。あなたの薄桃色が絶妙に葉で隠れてる。すごくセクシーだ。そそられる」
「ん、ぁ……っ!」

 突然、ふくらみのいただきに刺激が走った。指で直接、触れられているのとは違う。先ほどオーガスタスは乳首が葉で隠れていると言っていた。彼は葉のうえから乳頭を押しているのだろう。

「っゃ、ぁ、ん……!」

 つんっ、つんっとじれったくつつかれ、身もだえする。リルが体を揺らすことで、蔦の葉もひらひらと揺れる。そのさまはどこか風情がある。

「リル、もっと体を揺らして。葉が踊ってる。きれいだ」
「う、ぅぅ……っ」

 意図して体を揺すっているわけではない。両手の自由がきかないことで、体がいっそう敏感になっているのだ。
 尖りきって、葉を押し上げてしまっているそこに、無骨な指先が円を描き始める。リルは喘ぎながら「はあ、はあっ」と呼吸を荒くして小躍りする。
 そうせずにはいられない。じかに触れていない、葉を通した刺激はなんともいたたまれず、もどかしさばかりがつのる。

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